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  カーデックスからの脱却
当院では一昨年までカーデックスを患者様毎のサマリーとして使用してきましたが、カーデックスを含めた指 示受けワークフローの全面的な見直しと再構築を2004年9月より開始しました。
カーデックスは患者様の情報を1名1ファイルで一覧出来る便利さはあるものの、鉛筆書きと消しゴムに よる書き込みと修正を行う点、ミスを伴いがちな転記作業にも関わらず内容確認システムの確立が難しい点に 問題があると考えました。具体的には、

1)鉛筆と消しゴムによる記載は修正や変更の過程(証跡)が残らず、ミス原因を追跡出来ない。

※「証跡(しょうせき)」は監査で常用されます。「証拠」は事実を証明する事象を意味するのに対し、証跡は 事実を時系列でどちらの方向へも追跡できる証拠の集まりを意味します。
診療業務に関わる書類は証跡としての性質を持つ必要がありますが、カーデックスは過去の記録を消しゴム で消去するため「証跡」とはなり得ないのに加え、鉛筆と消しゴムによる記載方法は「証拠」としても不完全で、 改ざんを疑われても否定しきれません。

2)カーデックスは転記作業を伴うにも関わらず、転記ミス発見のシステムが構築し難い。

※複数のスタッフによる確認作業はミス発見率向上の常套手段ですが、現実のミスの発見率は数学的に算出 される発見率より低くなります。これは、複数人で共同作業を行うと一人あたりの能力が単独で行う時よりも低 くなる「リンゲルマン効果」が主な要因となっていると考えます。
カーデックスが医師と分離されナースだけの「閉じた」システムである限り、複数人チェックによるミスの 減少効果は頭打ちで、根本的な改善は難しいと考えます。

  カーデックスに代わる方法
電子カルテ導入と同時に電子カーデックスや患者別ワークシートを導入しカーデックス廃止する方法が一般的 ですが、システム導入だけでなくメンテナンスに高額の費用が必要な点、電子化を行ってもペーパーレス化か ら遠ざかるケースも多いことから、紙メディアを用いるワークフロー構築を目指しました。

1)電子カルテ導入に伴う費用の問題

※入院部門を機能に含む電子カルテシステムは100床あたり導入に1億円、メンテナンスに年間1000 万円必要と言われています。システムにより違いはあると思いますが、いずれにしろ電子カルテ導入に高額の 費用が必要なのは間違いありません。
当院のような130床程度の中小規模病院では、導入によるメリットよりも導入とメンテナンスの費用が重荷 となる側面が大と判断しました。現実にはコンピュータ自体に問題は無くても、ソフトウェアのバージョンアッ プに伴い処理能力不足となりコンピュータ本体の更新を迫られるケースも考えられ、予想外の費用がかかる可能 性が高いと考えます。

2)電子カルテ導入に伴う帳票増加の問題

※電子カルテを導入し電子カーデックスによる業務フローを検討した結果、、モニター画面を見て直接業 務を遂行するよりも、プリンターから印刷物として出力したシート(患者別ワークシート)を参照して業務を行 うケースが多いと予測しました。インターネットが普及し始めた1995年頃からペーパーレス化を理想に IT化を促進した企業や組織が増えましたが、帳票類が簡単にプリントアウト可能となったため、逆にペーパー 類が増加したケースが多いと言われています。帳票類の増加は単にコストの問題だけでなく、個人情報保護の上 で脆弱性を発生させる可能性を含んでいると考えます。

  当院で採用したMカードによる方法
電子カルテ化は大変魅力的ですが、当院にとっては金銭的負担が大き過ぎると判断されました。そこで紙メデ ィアによるカーデックス代替システムの検討を開始しましたが、その際留意したのは以下の2点です。

1)ナースとヘルパーの閉じたシステムではなく医師も情報共有に含めるシステムとする。

2)鉛筆と消しゴムによる記載方法は、不確実で記録の証跡も残らないため使用禁止とする。

検討の結果2004年12月より使用開始したのが名刺サイズのカードを使用する方法です。名刺サイズのメリットは日 常的に使用されるアイテムなのでサイズが標準化され、ファイリング用品が一般の文具店で簡単に入手可能な点で す。しかも、種類が豊富で安価な点も大きなメリットです。当院では名刺の最初のアルファベット「M」から「M カード」と呼んでいます。
名刺用クリアファイルは2種類を一組で使用し、いずれもカルテ最初の見開きページに挿入してあります。ひ とつは医師が内容確認とサインが済んだカードを保存するファイル(図1)もうひとつは医師未確認のカードを保 存するファイル(図2)です。
指示受けしたナースはカードに内容記載し、未確認カード用のファイルに入れます。医師はカード内容をチェ ックしたら確認のサインを行い、サイン済のファイルに移動します。

1)について
医師は指示がナースに正確に解釈されたかをカードで確認した上でサインします。ナースは医師によるカード の確認とサインが行われたことにより、内容に間違い無いと判断します。このワークフローは医師とナースが共有 するエリアでのPDCAサイクル実現を目指しています。

2)について
カード記入はカルテと同様に鉛筆による記載は禁止しています。指示期間が終了すると従来のカーデックスで は消しゴムで消去していましたが、Mカードではカードに終了を意味する斜線を引きカルテ2号用紙に貼付し証跡 として残すようにしています。


※Mカードの導入に伴い、従来のカーデックスは2005年11月を以って全面的に廃止しましたが、現在のところ廃止 によるメリットはデメリットを上回っていると判断しています。
電子カルテ・電子カーデックスが導入済みの施設で勤務しておられる専門職の方々にとっては、原始的で素 朴な方法として映るかもしれませんが、コストパフォーマンスに関しては他のシステムより勝っていると思います。
紙メディアを用いた従来のカーデックスと比較すると、PDCAサイクルを「医師とナースの共有エリア」に 置いた点にアドバンテージがあると考えています。